用語解説

レジオネラ菌
レジオネラ菌（Legionella）は、環境中に広く存在するバクテリアの一群で一部の種が人間に感染症を引き起こすことが知られています。レジオネラ菌感染症は、レジオネラ症（Legionellosis）とも呼ばれ一般的には肺炎を引き起こすことがあります。レジオネラ菌は、自然界の水源や湿度の高い環境、特に温水系統や冷却塔、湖沼、温泉、スパ、シャワーシステムなどに存在することがあります。
主なレジオネラ菌感染症としては以下があります。
●レジオネラ肺炎
これは、レジオネラ菌に感染して発症する肺炎です。高熱、咳、呼吸困難などの症状が現れることがあります。感染経路は、レジオネラ菌が含まれる微小な水滴を吸い込むことで感染します。高齢者や免疫機能が低下している人、喫煙者などが感染しやすいとされています。
●ポンティアック熱
これは、レジオネラ菌に感染して発症する風邪様の症状を引き起こす感染症です。発熱、筋肉痛、頭痛、倦怠感などが見られますが、通常は重篤ではありません。

レジオネラ菌感染症の予防には、感染源となる環境中のレジオネラ菌の繁殖を防ぐことが重要です。特に、温水系統や冷却塔、シャワーシステムなどの設備の適切なメンテナンスや清掃が必要です。また、水滴を吸入するリスクを減少させるため高リスクな環境での予防策として噴霧装置を適切に設置し適切な通気や換気を行うことが重要です。

飲料水に含まれるレジオネラ菌の健康被害について
飲料水に含まれるレジオネラ菌は、主にエアロゾルとして空気中に拡散された際に人体へ吸引されることで肺に侵入し重篤な感染症であるレジオネラ症を引き起こす危険があり、高齢者や基礎疾患を持つ者、免疫力が低下した人々にとっては命に関わる健康被害をもたらす要因となる。感染初期には高熱、咳、倦怠感、筋肉痛、食欲不振などが現れ、やがて重度の肺炎へと進行する可能性があり、特に発見が遅れた場合には呼吸不全や意識障害に至る例も報告されている。レジオネラ菌は自然環境下の水や人工水系に広く分布しており、水道設備、冷却塔、加湿器、貯湯槽などの水を媒介とした空間に長時間滞留すると増殖しやすく、飲料水にわずかでも混入することで感染リスクが高まる状況が生じる。とりわけ飲料水が高温と栄養分を兼ね備えた環境に置かれると、レジオネラ菌はバイオフィルムと呼ばれる微生物群の中で保護されながら急激に増殖し水質検査で一時的に検出されなくても感染源となる恐れがある。このため飲料水の管理においては塩素濃度の維持や定期的な水質検査の実施、配管内の清掃といった予防措置が不可欠であり感染の未然防止には日常的な衛生管理の徹底が求められる。健康被害の程度は個人差が大きく、軽症で済む場合もあるが、肺に炎症を生じさせるレジオネラ肺炎は抗菌薬の投与を要する重篤な疾患であり、適切な医療介入が行われなければ死亡に至る危険もある。また、同一水系を利用する複数人への集団感染が発生した事例も多数存在し、飲料水の供給施設や病院、高齢者施設、公共施設などでの発生は社会的にも重大な問題となり得る。レジオネラ菌による感染は特定の季節に偏らず、設備の構造や管理体制に起因して突発的に発生することから年間を通じた継続的な監視と対策が必要とされている。飲料水は本来、安全であるべき生活基盤の一部であり、そこに病原体が混入することによって起こる健康被害は深刻かつ予測困難であるため水道事業者と利用者の双方がレジオネラ菌の存在と危険性を十分に理解しそれぞれの立場で適切な管理と衛生対策を行うことが極めて重要である。